脂質の働きをわかりやすく解説!

コラム健康

脂質

「脂質」と聞くと、たいていの方はあまりよいイメージを持っておられないと思います。その通りで、脂質を摂り過ぎると心筋梗塞などの循環器疾患につながるなどのリスクがあります。しかし人体に必要な栄養素であることは間違いありません。ここでは脂質の働きを見直しておきましょう。

脂質は体温調節に欠かせないって本当?

「体脂肪」などの言葉にあるネガティブイメージから、脂質を摂ることに罪悪感を抱き、脂質の摂取を極端に減らすという方が少なくありません。

しかし、脂質は体に蓄えられ、必要に応じて分解されることでエネルギーになります。また、体温の調節、内臓の健康、血圧の維持などの働きがあり、細胞膜、脳神経組織、ホルモンなどを作るのに欠かせない栄養素です。

「食欲の秋」と言われる季節は、食欲が増して、ついたくさん食べてしまいます。その理由は、温度が低下してたくさん食べるようになると、厚くなった皮下脂肪が断熱の役割を果たし基礎代謝量も増え、寒さに耐えやすくなるからです。

そのため、脂質が不足すると体温を保つ熱や活動する力が弱まり、消耗が激しくなります。1gにつき約4kcalのエネルギーを生み出す炭水化物やタンパク質と比較して、脂質からは1gにつき約9kcalのエネルギーを得ることができます。

少量で多くのエネルギーを作り出すことができる脂質は、効率のよいエネルギー源であり、体温調節には欠かせない栄養素であることが分かります。

脂質は細胞膜や脳神経組織をつくる材料になるって本当?

脂質は脳とも結びつきが大変強いことが分かっており、神経伝達細胞の構成成分となっています。そのため、脂質が不足することは神経伝達細胞の不足を意味し、情報の伝達ができなくなる可能性もあります。

また、脳は水分を除く約60%が脂質でできていることからも、脂質の重要度が分かります。そして、脳には約500億から1兆個も神経細胞がありますが、コレステロールがこれらの細胞にとって必要不可欠な要素となっていることも事実です。

同時にコレステロールは人間の体を構成する細胞の細胞膜に含まれている成分で、細胞膜の流動性を調整する働きを担っているのです。

脂質はホルモンを作る材料になるって本当?

脂質は人体にとってさまざまな役割を持ちますが、その中の一つにホルモンの材料になるということがあります。

ホルモンの一つであるステロイドホルモンと呼ばれるものは、コレステロールの一部と結合して生成されます。

また、女性ホルモンや男性ホルモンも、脂質が重要な役割を有しており、脂質が減少することによってこれらの成分も少なくなります。

極端なダイエットをした方のホルモンの減少が報告されているように、脂肪分が減るというのは実はホルモンバランス的にはかなり大きな影響を与えるのです。

脂質はビタミンの吸収を助けるって本当?

余りつながりは無さそうに感じますが、実はビタミンの吸収に脂質が役に立つことがあるのです。ビタミンA、D、E、Kなどは脂溶性ビタミンと呼ばれ、脂質と深いつながりがあります。

ビタミンAはニンジン、ピーマンなどの緑黄色野菜に豊富に含まれています。これは脂溶性ビタミンであるため、脂質があれば体に多く吸収されるのです。これらの野菜は炒め物で食べると、ビタミンAがたくさん吸収されるということになります。

同じくビタミンDも脂溶性ビタミンです。カルシウムの吸収を促し、骨や歯を丈夫にする役割もあるので、ビタミンA同様に脂質と一緒に摂ることを心掛けましょう。

ビタミンCはピーマン、ホウレンソウなどに多く含まれています。ビタミンCは調理法により失われることもありますが、植物油を使った短時間の調理なら損失を防ぐことができます。

また、植物油はビタミンB1の消費を節約するという働きがあるとされています。油を使った料理はビタミンB1確保には有効な調理法であるということです。

脂質を摂る時のポイントとは?

ここまで述べてきたように、脂質は体にとって不可欠な栄養素で、適度に摂取することが望まれます。ただ、脂質を摂る時はいくつかのポイントを知っておく必要があります。

ポイントの一つ目は、肉よりも魚を多く食べるようにするという点です。肉には飽和脂肪酸が多く含まれています。一方、魚には必須脂肪酸が多く含まれるので、肉より魚の方を多く摂るように心掛けて下さい。もし、肉を食べる時は、赤身中心の部位を選ぶことが大事です。

ポイントの二つ目は、調理法を工夫するという点です。脂質は調理法で簡単に調整することができます。まずは脂身が分かれているようなら切り落としてしまいましょう。調理法では、油を多く使う「揚げる」とか「炒める」というのを減らし、「煮る」とか「蒸す」という調理法を使って下さい。また焼く場合は網焼きにして余分な脂を落としてしまうことも大事です。

ポイントの三つ目は、脂質の多いお菓子を減らすということです。食事以外の間食から摂る脂質も無視できません。お菓子が食べたくなったら、栄養表示に注意し、脂質の少ないお菓子に切り替えることも必要です。

脂質の働きについて

脂質はあまり歓迎されない存在のようですが、人体にとっては欠かせない栄養素です。いろいろある役割の中で、脂質は体に蓄えられ、必要に応じてエネルギーになり、体温の調節をするという働きがあります。

細胞膜の材料になるだけでなく、脳との結びつきから脳神経組織の材料にもなっています。ホルモンの材料にもなっているため、極端なダイエットはホルモン異常を招くこともあります。

また、ビタミンAやDは脂溶性ビタミンになり、脂質と一緒に摂ることで吸収率が高まります。もちろん脂質の摂り過ぎは種々の病につながります。肉より魚を意識して摂る、油を使わない調理法を使う、などのポイントを守り脂質を上手に摂りましょう。